57 夏の着物をはじめる その1

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

2011年春。毎日着物を着るようにしてすぐに思った。「夏、何を着るんや私」。

それまで夏というと持っていたのは浴衣ぐらい。夏の展示会などは作務衣を着て着物は着ていなかった。けれど毎日仕事で着るとなると浴衣では相応しくない場合も沢山ありそうだ。

ということで着物、帯、袴等を誂えていくのであるが、まずは着物の話である。

早速当社の夏の本場大島紬と縞大島を買って仕立てた。縞大島は無地感だったので縫紋を入れてフォーマル兼用にする(今もそうしている)。居敷当は迷った挙句、付けなかった(お客様には付けた方が安心とは言います)。羽織はフォーマル用に縫紋の黒絽羽織を仕立てた。

けれど、毎日正絹では日頃この暑さの中は厳しい。やはり水で洗濯したくなるんじゃなかろうか。そう思って調べるとどうやら小千谷などの麻着物が良さそうという結論に至った。もちろんこれまで麻は浴衣しか着たことがない(7 初めて浴衣を買った話のスイカ浴衣が麻100%だった)。なんでも試しだと思い、早速お取引先にお願いして取り寄せて購入した。

水で洗える、という点でポリエステルの絽もなんとなく買ったりして色々試していたが、とにかくはじめの夏は散財した。というのも冬と夏は殆どが別でイチから揃えないといけない。冬のものを夏に使おうと思ってもそうはいかないことが多くて、あれもこれも必要やんかとブツクサ言っていたけれど、よく考えたら洋服でも夏冬は別であるし暑すぎて熱中症になるわけにもいかないから仕方がない。ただ、洋服と違って、冬と同じだけの生地分量や仕立て代金が必要になるので(夏物の方が高価な場合もある)、金銭的な部分でもハードルはぐっと高くなるように思う。そういう意味で夏の着物を着る人は超が付くほどの着物好きなのだろう(と思うのだけれど果たして…)。私は得意の分割払いで切り抜けた…。

さて、麻着物を実際に着て驚いたのは天然繊維なのに速乾というところだった。物によっては絞るとシワシワになるので、私はボタボタのまま浴室で乾かすのだけれど夏場だと半日もせずに乾く。着物洗いたい派の方々にはとてもいいと思う。ただし麻にもさまざまあるので、詳しくは購入先に聞いてみてください。

一方でポリエステルはほぼ雨の日用になった。購入したものはスケスケだけれど暑かったし、けれど雨染みやシワにはなりにくかったので台風や大雨に役立った(そんな時に着物を着る必要もなかったけれど)。

一番よく着たのは夏大島だった。仕事上の理由もあったけれど、肌触りや裾捌きなど今でもとても気に入っている。購入時からこれまで沢山着た。10年経ってそろそろ買い替えようかなと思いながらも好きでまだ着ている。

ちなみに夏の着物は暑さ対策が重要だと思っている。私の体感ではあるが、夏大島と通常の大島の単衣では暑さに雲泥の差があるので、大島紬の生地が薄そうだからといって夏に着ると暑くてとんでもないことになる。その点、夏大島は糸の隙間から風がスース―入って気持ちがいい。尚、当社の夏大島は7・8月だけでなく、5月頃から10月頃、暑いと感じる時にいつでもお召しくださいませ。

尚、nonoのサイトでも販売するものもございます(時期による)。春になる頃にまたチェックしてみてください。