日本の色を愉しむ

コピーライター 橋本繁美氏の寄稿記事。

「鶯色(うぐいすいろ)」「東雲色(しののめいろ)」「萌葱色(もえぎいろ)」「茜色(あかねいろ)」「利休鼠(りきゅうねずみ)」など、字面を眺めているだけ美しい響きと趣を感じさせてくれる日本の伝統色。色に抱くイメージは人それぞれ異なると思うが、こうした和の色を目にすると、どこか懐かしく安心感を憶えるのは、きっと日本人のDNAに和の色が刻みこまれているからだろう。私たち日本人が古より、季節の移り変わりを空や植物から感じ取り、自然とともに生きてきたことが感じとれる。四季の豊かさ、それを愛でてきた日本人の心が見える、そんな和の色をシリーズで紹介。

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丹色(にいろ)/赤銅色(しゃくどういろ)

寄稿者:橋本繁美 丹色(にいろ) やや黄みを帯びた赤色。「丹(に・たん)」はもともと「赤い土」という意味で、幅広い赤をさす。赤はもともと「魔除け祈願」の色とされ、神社の鳥居や社殿にも丹色が使われ、梁は丹塗り(にぬり)のものが多く、古い時代か...
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蘇芳(すおう)/紫苑色(しおんいろ)

寄稿者:橋本繁美 蘇芳(すおう) 蘇芳とは、黒みを帯びた赤色のこと。「蘇方色」「蘇枋色」とも呼ばれる。蘇芳とは染料となる植物の名前で、インド、ビルマ、マレー半島に生育する熱帯地方原産のマメ科の落葉小高木。その樹木の芯には赤色の色素が含まれて...
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弁柄色(べんがらいろ)/承和色(そがいろ)

寄稿者:橋本繁美 弁柄色(べんがらいろ) 暗い赤みの茶色。紅殻、紅柄とも表記される。弁柄は土のなかで酸化した鉄分を主成分とした赤色顔料。日本での歴史は「朱」と同じくらい古く、旧石器時代の遺跡から出土した土器の彩色に用いられている。インド東部...
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二藍(ふたあい)/京緋色(きょうひいろ)

寄稿者:橋本繁美 二藍(ふたあい) 藍の上に紅花を染め重ねた明るく渋い青紫色のこと。二藍は一色の名前でなく、古くは紅のことを「紅藍(くれない)と表記し、青みの二藍から紅に近い二藍まで幅広い色がある。年齢を重ねるほど、青みの濃い二藍を選び、若...
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女郎花色(おみなえしいろ)/海松茶(みるちゃ)

寄稿者:橋本繁美 女郎花色(おみなえしいろ) 秋の七草のひとつに数えられる女郎花の花のように、明るい緑みの黄色。また襲の色目に「女郎花」がある。女郎花は「思い出草」ともいわれ、万葉の時代から多くの歌に詠まれている。「女郎(じょろ)」が令夫人...
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向日葵色(ひまわりいろ)/月白(げっぱく)

寄稿者:橋本繁美 向日葵色(ひまわりいろ) 代表的な夏の花、ヒマワリの花のようなあざやかな黄色。19世紀後半に登場した化学染料により、あざやかな発色が可能になったため生まれた比較的新しい伝統色。とくに黄色や緑色には新たな色が多数誕生し、流行...
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蒲色(かばいろ)/竜胆色(りんどういろ)

寄稿者:橋本繁美 蒲色(かばいろ) かなり濃い黄赤色。水草の蒲(がま)の穂からきた色名。その円柱状の花穂(かすい)、稲穂のように長い花軸に花が群がってつく花序にみられる黄赤色が語源とされる。よく樺色と混同されるが、樺桜の樹皮に見られる茶系統...
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木賊色(とくさいろ)/水浅葱(みずあさぎ)

寄稿者:橋本繁美 木賊色(とくさいろ) 多年生常緑のシダ類の一種、木賊のような落ち着いた緑色。観葉植物としても栽培される木賊だが、その茎が珪酸を含んで固く、ざらざらしているために、紙やすりのように板などを磨くのに使われていた。その用途から「...
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鳥の子色(とりのこいろ)/玉蜀黍色(とうもろこしいろ)

寄稿者:橋本繁美 鳥の子色(とりのこいろ) 鳥の卵の殻のような、赤みがかった淡い黄色のこと。鎌倉時代からみられる伝統色で、色名の「鳥の子」とは、鶏の雛ではなく、卵をさし、その殻の色に由来する。また、上質な和紙の原料である雁皮を漉いた厚手の紙...
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露草色(つゆくさいろ)/桔梗色(ききょういろ)

寄稿者:橋本繁美 露草色(つゆくさいろ) 夏の早朝に咲く露草の小さな花の青色。露草はツユクサ科の一年草で、日本各地に群生する。露草の花や葉の汁で布を摺染したことから、古名を「付草」「ツキクサ」といい、「着草」「月草」「鴨頭草」とも呼ばれる。...