桜色(さくらいろ)/灰桜色(はいざくらいろ)

日本の色を愉しむ寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

桜色(さくらいろ)

日本人にこよなく愛される桜。桜色とは桜の花のような淡い紅色。紅染でもっとも淡い色。『万葉集』には奈良時代の花見は梅だったが、『古今和歌集』では平安時代に花といえば桜を指すようになった。日本人にとって桜は特別な花。咲き誇る姿に華やかさを、そして散っていく姿にはかなさを感じる。今では桜といえばソメイヨシノだが、当時の桜といえば山桜だった。この色名も本来は、山桜のほんのりと薄い赤みに由来する。

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灰桜色(はいざくらいろ)

桜の花びらのようなはんなりした淡紅色に、灰色みがかかった明るい色をいう。灰桜色は日本の伝統色のなかでは珍しい「灰」のつく色名。鼠系統の色のなかでは最も明るく、あたたかみがあり、上品で穏やかな色。つまり晴れやかながらも地味な色調で、上流階級の娘たちに好まれ、あたかも篝火に映える夜桜の色とたとえられる。語源からすると「灰桜」は灰みを含んだ桜色であり、「桜鼠」というと桜色をおびた鼠色ということになる。桜鼠とは、淡い紅色が灰色あるいは薄墨がかって、わずかにくすんだ薄い桜色のこと。いわゆる墨染(すみぞめ)の桜。色名に鼠が付く色は江戸時代初期頃から見られるが、桜鼠は元禄以降に用いられるようになったのではないかと思われる。

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