藤黄(とうおう)/茄子紺(なすこん)

日本の色を愉しむ寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

藤黄(とうおう)

温かみのある冴えた黄色。藤黄は中国の伝統的な顔料「藤黄(トウホアン)」を日本語読みした色名。東南アジアが原産の草雌黄(くさしおう)というオトギリソウ科の熱帯常緑樹。その樹脂からつくられ、そのあざやかな黄色から友禅染や日本画の黄色絵具として珍重され、工芸品の塗色にも使われた。そういえばこの時期、夜の闇のなか、藤黄の光を明滅させて飛ぶ蛍の姿。まさに幽玄そのもの。そんな蛍を思い出す。

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茄子紺(なすこん)

夏野菜としても親しまれている茄子の実のような深い紺色。茄子はインドが原産の野菜で、中国を経て日本に伝わったのは8世紀。ヨーロッパに伝わったのは13世紀頃。この色名は江戸時代になってからで、紺色のバリエーションが豊かになり、この色が生まれ出されたといわれる。大正時代には、きものや小物の色として大流行した。

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