男と着物 2 角帯への憧れ

中学生の私の浴衣に兵児帯を選択した母は見事だったと今では思う。まず簡単である。

とりあえず着物を合わせて腰紐で留める(この頃だけ。私は普段腰紐を使わない)。あとは上から兵児帯をくるくる巻いて蝶々結び。ちゃんとできたかチェックして終わり。

そんな簡単なことでも「自分でできる」という嬉しさがあった。だから大人になっても着流しは難しいと思わなかった。

そしてもう一つ、兵児帯から始めたことの影響もあって、角帯に対して憧れるようになった。なんだか固そうな帯は「大人の帯」というイメージで格好良かった。普段なんとも思わないおじさんでも祭りの浴衣と角帯がその人を格好良くした。

当時憧れた祇園祭綾傘鉾の浴衣と角帯。今見ても格好良いなと思う。

今思い返せば「あの大人の帯は格好良いな」と思ったことと同時に、「どうやってあれをあの形(貝ノ口)に結んでいるのだろう」と疑問に感じていた。それが解消されるのはもっと後のことになり、しかもそのうち角帯もファーストチョイスではなくなるのだが、当時は漠然と大人への憧れは角帯への憧れだった気がする。もっとも、祇園祭(というより山鉾巡行)が終わってしまえばそんな憧れも記憶の彼方へ行ってしまったのだけれど。

ピシっと結べると気持ちがいい

結局大人に憧れて、高校生になってから綾傘鉾の浴衣を着せてもらったことがあったが、「固そうな帯」は結ぶことがなかった。今考えるとあの頃の私には「背伸びして角帯」よりも兵児帯の方がおしゃれだったと思うし、選択は正しかったように思う。

けれど憧れはいずれ叶うことや、夜中に飛び起きて角帯の締め方を研究するような日が来ることなどその時は想像するはずなく、やっぱり固そうな帯に憧れていた記憶だけが残っているのである。

2020年12月21日 | Posted in 男と着物 - 回想録 - | | Comments Closed 

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