31 着物生活をはじめるまで1

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

前回のつづき)2010年頃の話。着物メーカー4社が集まったその会は三世会と名付けられた。発起人の「厳しい時代に後継者と共に新しいことを考えよう」という考えに賛同した社長と後継者(父と子)たち。当社もその一つだった。

「三世会に参加して飛躍的に前進した」と言いたいところだけれど結論から言えば特別な事は生まれていないし、今やただの友達付き合いである。けれど何かやろうとしたことは次の大切な気付きを与えてくれたのだと思うし、発起人をはじめとする父達(当時はみな社長)には大変感謝している。

実際事前に何かが決まっていたわけではなかったので意見交換から始まり、そして見事に意見交換で終わった。毎月集まる度に「新しいこと」は色々考えてみたが、月日だけが流れる。そんな中で私も含めた息子たちは経験も知識もおまけみたいなものだったが、社長たちの話を聞いているだけでもつまらない。結局息子だけで集まって話をするようになった。

息子だけで集まってみたものの、何かやりたいという気概だけの集まりになった。いつも考え、何もなく、いつも考えつかなかったが、ある時メンバーの一人が「商工会議所に相談してみよう」と言い出した。

その一言が後の着物生活につながっていくとその時は考えもしなかったけれど、その時はただ何かやらなければと漠然と感じていただけで、何もなかった。何もないまま商工会議所へ行った。(つづく)

会についての後日談

結局三世会は父子での分裂を経て、父会はいろいろあって閉会、子会はダラダラ継続しコロナ禍になるまで毎月続いた。具体的に何も生み出さなかったが同世代でメーカー的立場、しがらみも無い関係として結果的に心地良かった。初めの「何かやろう」は棚上げしたままである。

またそのうち何か生み出すのだろうか。いや、多分何もないだろうな。でもそういう場所が一つぐらいあっていいかなと思っている。そして似た立ち位置で気兼ねなく話を出来る関係を得たことが私にとっては何より有難かったような、気もする。さて。