54 七五三の着物(私と黒紋付)

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

七五三は家庭ごとの事なので何を着るべきかは各家庭ごとに考えれば、それが正解な気がする。留袖を着ようが、色無地を着ようが、紬を着ようが誰に迷惑をかけるものでもないし、そもそも七五三をどのように捉えるかで違ってくるのだろうから家族で何を着て出掛けるかを話し合うのも楽しいのではないかと思う。写真を当日撮るかどうかでも違ってくるのかもしれない。

我が家の場合は当日に写真撮影してお詣りという行程。私はぎりぎりまで一つ紋の着物を着ようとしていたのだけれど、急遽変更して黒紋付を着た。

それまでも脳裏をよぎった黒紋付だったけれど息子の着物が黒紋付だったので「お揃いもなぁ」「違う着物を着た方が写真で息子が目立つかもな」などと考えていた。

妻は訪問着を着るという。一方で当日は私の母も付き添うと言っていたので、ふと何を着るのかと思い、3日前ぐらいに聞いてみた。答えは「色留袖着るわ」との事だった。

「えぇ?色留?本気やんか」
「だって訪問着派手になってしまったし、他に着るのないねん」

私の想像以上の格だったので驚いたのだけれど、まあよい。それはそうと我々より母の着物が格式高いというのに何となく違和感があったのでそれならばと私は黒紋付を着ることにした。

前日の夜に母からメール。

「小紋があったからこれにしようかな」
「よく考えたら白大島の訪問着があったわ」

着るのあるやん。ということで白大島の訪問着に落ち着いたのだけれど、私はそのまま黒紋付を着ることにした。

そもそも着物自体には特別感が少ない私。一つ紋もちょくちょく着るので、一つ紋だと気分的には「いつも通りの着物」である。一方で母に翻弄されながらも「一生に一度やなぁ」と改めて思ったことは「面倒くさがらずに着て神様に礼を尽くそう」という気持ちになり、「それなら滅多に着ない黒紋付を着るのも良いかな」という判断に繋がった。私にとっては数少ない「わざわざ着る着物」。だからこんな時こそわざわざ着ようと思ったのだ。実際当日を終えて、やはり良かったなと思った。全て自己満足なのだけれど。

妻ははじめからずっと訪問着一択だった。家系なのか、私と母だけがああでもないこうでもないと言っていたが、それも良い思い出になった。私が何を着ていようが息子にとってはどうだっていいだろうけれど、こうして周りの大人は納得して息子の七五三詣を出来たのである。

ちなみに当の本人は帰ってから「また七五三やりたいなぁ」と言っていたので、着物に興味でも出たのかなと思って聞いてみた。

「なんでまた七五三やりたいの?写真撮りたいの?着物着たいの?」
「だってまたおもちゃ欲しいもん」

理由は着物や写真ではなく、神社で祈祷の記念品に頂いたおもちゃだった。ありがとう、平安神宮さん。

子、私、母。子は移動中羽織なし・スニーカー