55 着物が好きかと聞かれて

投稿者:ウエダテツヤ

改めて着物が好きかという質問に向き合ってみると、いつの時代も私はそれが曖昧で、好き嫌いとは少し異なるものを通して着物と関係してきた。例えば(40「腑に落ちる」探し)の時には「好きというより楽しめていた」と記しているが、ある期間において着物に拘ってきたのは着物を自分のもの、自分にとってのファッションにする必要があったからだったように思う。

そもそもファッションそれ自体は高校生後半ぐらいから好きだったけれど、学生時代は単純に同世代だけを意識したものだった。何となく流行を意識する側で、その背を見つめながら、それなりに楽しんでいた。お気に入りの服を着る高揚感というのはそういう時期に知ったのだと思う。

就職して一気に(着物屋のくせに)スーツ人生になり、買い物はストレス解消目的になった。広くとも互いに緩やかな関係性が多い学校生活とは違って、沢山の人に会うこともない。休日という限定されたところでのファッションは一種の逃げ場に対する満足感のようなものだった。頂いた給料を自由に使える状況にどっぷり浸かって多くをそこに費やした。仕事上売る側の気持ちもわかってきたので、勧められるものを買う気持ちよさも好きだった。しばらくしてスーツは着物に代わったけれど、きものはこの時点では仕事着だった。仕事着ももちろんファッションだけれど、とにかくそれだけだった。

前職退職後、奄美大島への移住でファッションが手元から離れていった。ウインドウショッピングする所もなく、車移動がメインで日頃は製造の勉強(実習)。たまの買い物はこの時始めたネットショッピング(オークション)だった。とにかくそれまで買ったもので事足りていて、停滞していた。きものは仕事上のイベント着だった。

京都に戻ってもそれはしばらく引きずっていて、ファッションがよくわからなくなっていた。着物を毎日着ることにしたのはそんな時だった。けれど当時の私は洋服和服を別に考えていたし、どちらも楽しむような感覚はなかった。もしかすると洋服が楽しかったなら着物を毎日着る選択はしなかったかもしれない。

ファッションとして着物を選んだのではないことは以前に投稿したとおりだ。冒頭にも記載の通り、それから洋服をまた着るまで、着物を自分のファッションにしたくて着ていたように思う。ずっと着物を着ていた。7〜8年経ってようやく着物は私のファッションだと認識できるようになり、そうなって洋服も楽しく着るようになった。

着物は流行とは異なるファッションの楽しさ、表現するということを教えてくれた。言い換えれば着物でファッションが楽しくなった。だから着物は好きなのだと思うけれど、一方で気に入らないところも沢山あるというのが本音だ。そしてお気に入りの服をきることは楽しくて、着物はそのうちのいくつかであり、けれど私のファッションの全てではない。仕事だけでなくプライベートでも着るけれど、洋服もよく着る。そういう着物との関係が心地よいと今は思うのである。

2022年01月18日 | Posted in 男と着物 - 回想録 - | | Comments Closed 

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