男と着物 6 ​初めての着物が特殊だった話

投稿者:ウエダテツヤ

​初めての着物は大島紬だったと言いたいところではあるが、実はそうではない。少しだけ特殊かもしれないその初めての(浴衣じゃない)着物についての話である。

それは就職先の小売店から支給されたウール?の着物であった。皆様の中にはバイト先の旅館が着物だった、飲食の仕事で、などでユニフォーム的なものが初めての着物のケースもあると思う。

ただ、特殊だと思うのは新入社員研修で角帯を習い、採寸方法も習い、なんと贅沢なことに誂え仕立て、自分サイズで支給されたことだ(当時)。初めての着物が誂えのユニフォームというのは滅多に無いと思う。

にもかかわらず、誠に失礼ながら私はその贅沢さを理解していなかった。「着物はこういう物なのだな」とだけ思っていた。しかも生地はサマーウール的なものだったが、何かはよく分からなかったし聞かなかった。ただユニフォームと思って、ユニフォームと呼んで、支給された入社間もなくは誰もがスーツだったので「一体誰が着ているのだろう」と思っていた。サマーウールの着心地は半襦袢から出た腕に当たって苦手だった。

一方で催事などが始まるとその深いグリーンを憧れの店長は格好良く着こなしていた。また、単衣だったがポリエステルの裏地のようなもの(居敷当)まで付いていてそれが何だか一段と格好良く見えた。今まで浴衣しか知らなかったので、裏地が付いているというだけで特別感が凄かった。

店長の格好良いイメージと初めの着物への思いから、ユニフォームなのに退職してからも10年近くは処分できなかった。保管場所にも困っていたが、ふと「あれ?これユニフォームやから外で着れへんやん」と気付いて断捨離した時にようやく処分した。

私にとって初めての着物はポリエステルの裏地に感動し、店長は格好良く着ていたが、着心地面では私と反りが合わず分かり合えないものだった。夏物の割に着ると暑かったのでクーラーの効いた室内でなければ辛かったかもしれない。無論ユニフォームだったのでそれでいいのだけれど、結局外で着たことはなかった。

支給されたものによって、着心地は大事だということを知れたことは大きかった。私は苦手だったが催事などでは着ている人も沢山いたので、着心地というのは人それぞれなのだなとぼんやり感じていた。ただし、その時はものを作る側になることまでは想像出来なかった。

一方で、(男の着物と私 3 初めての角帯の話)でも登場したが、一緒に支給された綿の献上は気に入ってずっと締めていた。いつからか正絹帯ばかりを締めるようになったが、今になるとまたいいなと思う。そちらは処分せず持っている。
そんなこんなで 結局綿の角帯を使ってお店で買った浴衣ばかりを着るのだが、それは次のお話。とにかくそんなちょっと特殊な初めての着物だった。

イメージ画像です。こんな感じの緑色だったと思う。
2021年01月18日 | Posted in 男と着物 - 回想録 - | | Comments Closed 

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