77 新たな着物の販売イベントたち1 Kimono Showcase

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

価格と数量の駆け引きで、薄利多売。私が卸売市場を知った時の印象だ。これは伝統的工芸品、本場大島紬の卸売市場でも同じだった。当社でも2000年頃までは反物が山で行き交う売買が主流だった。物量の多さによって相場価格も存在していた。

商品は全てがオープン価格。メーカーや問屋が直販するというのは他の業界以上にタブーだったように思うし、今でもネット販売にあまり出ない商品も沢山ある。そんな中で私が出会った画期的な展示会がKimono Showcase(別名で開催したこともあった)だった。

私が着物を毎日着るようになる少し前のこと。出展の一社と以前から取引があり足を運んだ。その時は私にとって「仕事」だった着物。特に大島紬という伝統的工芸品に囲まれた中で見たそれらはとても物珍しく私に映った。小売希望価格がどれも決まっているんですよ、と説明され凄いなと感心した。

それから間もなくして当社貸しスペースで開催したいとご要望いただき、ならばと当社の出展をどさくさ紛れにお願いした。基本的にオープン価格だった当社商品の中で、唯一ある企画で上代を決めたプレタ品(仕立て上がりの着物)があったのでそれを主に出展した。

その頃丁度私の毎日着物が始まり、その後nonoへとそれらは変わっていくのだけれど、とにかくKimono Showcaseがなければ今はなかったと言えるほどにそこに影響され刺激を受け、感心、感動し、その姿勢に感銘を受けた。出展者だけでなくそこに来られる取引先やお客様も含めnonoを創り上げる原動力となった催しだった。