85 話し掛けられること。

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

着物を着て突然話しかけられることが増えた。というか洋服だけを着ていた頃は話しかけられるのは道ぐらい。着物を着ているといろいろと話しかけられる。

「素敵ですね」なんてほめられると嬉しい。

「私も若い頃は着物を着ていたのよ」と昔話を突然されることもある。

「歌舞伎ですか?」と聞いた方は、歌舞伎の関係者と思われたのかもしれない。いえいえ、滅相もないです、着物の仕事なのですと返答し納得された。

「何かやっていらっしゃるのですか」習い事は特に何もしておりません。

「実家が着物を染めているんですよ」「実家が着物屋なんですよ」なんていうのも何故かちょっと嬉しい。

「写真撮ってもらえますか」と10年前のイタリア・フランスではよく言われた。

「私も着物着たいんです!」ありがとうございます。最高です。

「なんの仕事してるのですか」子の保育園繋がりの方などにはよく聞かれる。話のネタになるのでありがたい。

「すごいですね」と言われると凄そうに見えてしまうことに、まだまだ仕事を頑張らねばと思う。

こんな風に様々に話しかけられる。

着ているものに一言物申されたのは祖母の一言「あんた、えらい粋な着方してるなぁ」だった。袖の中から見える長袖のヒートテックに一言そう仰った我が祖母。京都の(祖母の)ニュアンス的には決して褒められているのではないが、「そうやねん」と言って受け流して話題を逸らした。ちなみに祖母は滅多に着物を着ない人だった。

ただ、昔は着物警察など着物姿にケチをつけるような人もいると聞いたが、幸いなことに見知らぬ人からマイナスなことを言われたことはない。バスなどに乗ってゴニョゴニョ話しているのが聞こえても「着物はええなぁ」という風な、着物を良い方に取る言葉。有難いなと思う。

本音を言うと目立ちたくないし、ただでも印象の悪い私なのだけれど、それでも話掛けてもらえるのはやっぱりみんな着る着ないは別にしても着物が好きだからかなと思い、感謝するのである。