86 袴とシャツ

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

2013年頃には様々なメーカーが台頭しつつあり、面白い発想のものがあった。10年近く経った今も続くものもあれば、既に事業転換され今はないものもあるけれど、少なくともその多くがそれまでの窮屈さから一気に解放されるような熱量を帯び、カタルシスに達するもののように思えた。

その評価自体はそれぞれにお任せするが、その波紋の中で私も居心地良かったのは何度か記載した通りでその時に感じた「自由でいい」という解放感は少なからずその後の私を私にしていった。いや、実は自由とは異なる道を模索した時期もあったのだけれど、解放の心地良さに抗うことに不自然さを感じて、考えた末に「心のままに流されてしまえ」と決めたことが今の私に繋がっている。

思い返せば自分の柔軟性のなさに苦みを感じるのだけれど、2013年頃はまさに自由の流れに抗いながら刺激を受けた時期で、その一つとして印象に残っているものが着物サローネで行われたカレンブロッソのファッションショーだった。

正確に言うと私達も着物サローネの出店者だったので会場で見たわけではなく、後に発行されたパンフレットや動画で拝見したに留まる。実は事前にファッションショーに出ることや開発中の商品などを見聞きしていたのだけれど、それでも本番のその多くがとても斬新に映った。男性モデルさんもさすが格好良かったことも相乗し、その着こなし、コーディネートに自分の固定観念を指摘された気がした。私にとっては白でありたいと思い込んだところにジワリと滲んだ小さな色彩のように、それは何年か越しで自覚しないままにどんどん広がっていった自由の兆しだった。

着物が楽しいということへの一つの答えだったのだけれど、当時の私にはまだわからず、ただ印象に残ったシャツと袴のコーディネート。結局それが5年後の自分になり、また次の発想へ繋がっていった。

私の状態もあって凄いな、面白いなと感じる発想が沢山あったように思う。熱量と解放と可能性と行き詰まり感が駆け巡るように感じた時代だった。