東雲色(しののめいろ)/桃色(ももいろ)

日本の色を愉しむ寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

東雲色(しののめいろ)

春はあけぼの やうやう白くなりゆく山際 少し明かりて 紫だちたる雲の細くたなびきたる  『枕草子』清少納言
春は夜がほのぼのと明けようとする頃がよい。日が昇るにつれ、だんだんと白んでいく、山際の辺りがいくらか明るくなって、紫がかっている雲が横に長く引いている様子がよいと語っている。

東雲色とは、このように夜が明け始める頃、太陽で白み始め、曙の空を思わせる朝焼けのような淡い黄赤色をさす。東雲はいまでいう網戸の網目にあたるもので、篠笹で作られていたので「篠の目」と呼ばれていた。東の雲が薄いピンクに染まり、真っ暗な室内に篠の目から朝陽が差し込んだことから東雲色と呼ぶようになった。曙色ともいう。

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桃色(ももいろ)

桃色と聞けば、桃の節句。春を感じさせてくれる。淡く薄く明るい赤色、ピンク色のこと。その名のとおり、春に咲く桃の花の色をさす。この名前が使われ始めたのは室町時代といわれるが、奈良時代の歌集である『万葉集』にも「桃花褐」(桃の花の色に染めること)という言葉を用いた歌が載っている。昔から、桃の花には邪気を祓うチカラがあると信じられてきた。そのため、桃色のきものをまとうことで、災いから自身や大切な人を守ろうと考えたのかもしれない。

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