桃紅色(とうこうしょく)/長春色(ちょうしゅんいろ)

日本の色を愉しむ寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

桃紅色(とうこうしょく)

桃の花といえば、女の子のための「桃の節句」。別名「上巳(じょうし)の節句」。上巳とは最初の巳の日のことで、災厄に見舞われやすいとされ、平安貴族たちは自分の穢れや災いを紙人形にうつし、川や海に流していた。それがやがて雛人形を飾り、女児の厄除けと成長を願う風習に変化したといわれる。長寿のシンボルといわれる桃は中国から伝わり、邪気を祓う力があるとされており、旧暦の3月3日(今の暦の4月上旬)が桃色の風物詩。「桃色」の染料は桃の花ではなく、紅花が使われていた。桃紅色は、桃色に比べて紅が強く、華やかさが増した色。

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長春色(ちょうしゅんいろ)

長春とは常に春であり、四季を通じて花の絶えることのないこと。常春 (とこはる)の意とあるように、日本の伝統色名といっても、色も名前も中国渡来である。冬も花が咲く「庚申薔薇(こうしんばら)」の漢名を長春花といい、金鳳花の別名ともされている。その花の色からの色名で、英語の色名オールドローズに相当する。ちなみに薔薇は中国などから渡来し、平安時代には「そうび」と呼ばれ、観賞用として貴族に愛好された。鎌倉時代の歌人、藤原定家の日記『明日記』(健保)2年・1214)にその名前が見られるとある。だが、この色が流行したのは大正時代のことで、落ち着いた色合いから人気を集めたそうだ。

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