続編102 息子の卒園・入学式

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

先日すでに初の通知表を持って帰ってきて、3か月以上経ってしまっていますが、息子の卒園と入学式に何を着たか、というお話。


本来フォーマルなので選択肢がないのだけれど、たまにはアレンジしたくなる私。決めてしまえば簡単なのだろうけれど、そんなことも忘れてしまい毎回季節や趣旨を踏まえてどうしようか考える。前回の続編101 しつこくスーツを持っていたでも記載した通り、スーツも処分したのでフォーマルと言えば着物一択。しかも実は考えるほどに選択肢はなく、私なりの最低限しか持っていない。それでも迷う私を俯瞰すると、自ら迷路に突入しているだけのようにも思うが、着たものをご紹介だけしておく。

ちなみに主役、息子の装いであるが、卒園式は制服指定だった。入学式について指定はなかったけれど、我々家族はそもそも積極的に着物を着せることはなかったので、本人同意のもとスーツを選んだ。ほぼ一回きりになるだろうとは思ったものの、それでも着てもらいたかった。紋付は七五三で着たし。

私の話に戻ろう。簡単なところから考えると、まず羽織。紋付一択でこれはすぐ決まった。背中が見えるよ、紋付きを持っているんだからそれを着ようよ、ということである。そもそもフォーマルかどうかを抜きにして黒い羽織が好きで、持っている紋付の羽織も黒しかないので「気に入っている+紋付=着るしかない」である。染め抜きの五つ紋(いわゆる黒紋付)と縫いの一つ紋(泥染無地に縫紋。(99 私のフォーマル着物も参照))のどちらかであるが、今回は一つ紋を選択。私の卒園でも入学でもないしお詣りでもないし、他の保護者の方もいらっしゃるので控えめに、という気持ちもあった。なんというか、雰囲気である。

次に。第一礼装的な縞、縞大島の袴、無地の袴(袴Pleats)、綿の袴(袴sideline)などを所持しているのだけれど、無地の袴を選んだ。控えめでフォーマル使いができて好きな色のものという基準だった。

着物の紋付も袷は五つ紋と一つ紋(いずれも無地)を持っているけれど、ふと「卒園入学同じにするのもなぁ」と変な感情が湧きおこった。スーツは同じでもシャツは変えたい。そんな気分と似ているのかもしれない。せっかく二回あるのに同じもので行くのか?という訳の分からない思い。同じもので行けよと今なら思うのだけれど、その時の私はなぜかそんな風に思ったのである。

結論として、小学校入学式は紋付を選んだ。(義務と名の付く)義務教育だからそれが自分で納得できる気がしたのである。逆に卒園式はそこそこ自由にしようと勝手に判断し、着物は無地(紋付)じゃないものを選ぶことにした。そうなるとルールとしての着物を少し外していく訳である(実際卒園式の保護者の装いも様々であった)ので、イメージによる判断しかない。大島紬事業だから大島紬にするか。いやいや、ちょっとカジュアル過ぎないだろうか。あっちの着物の方がふさわしそうだけれど自分の会社とは関係ないしなぁ…などと余計なことも含めて色々考えた挙句、結局無地よりも少し華やかさがある気がした縞柄の織物(当社品)を着て行った。

いずれの式でも我々の性格上、子の写真以外はほとんど撮らなかったし、私が何を着ていようが私の納得感だけのことだった気もする。そもそも着物だけを変えても後ろ姿は同じであるし、あとで考えればどうだってよかったなとも思ったけれど、私なりに考えたことは楽しかった。一生に一度の良い経験だったと感じている。

卒園式で着た着物と同じもの
入学式へ向かう私と息子(妻撮影)