17 買う前に考えたいけれど

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

​私の性質かもしれない。時に妥協してでも手に入れたくなる。とにかく買いたいと思うとすぐ買いたい。欲しい物があると探す探す、すぐ欲しい。結果、「買いたい」がどんどん先走り、その時そこにある物から選ぶ「これでいいか」まで到達する。

何となく着物が欲しいなと感じている時に特価コーナーなんてものがあると大変である。はじめは「欲しい物がないかな」と思って自分の好み100点を探し始めるのだけれど、段々と80点でもいいか、70点でもいいかとなり、何としても買いたい!という気持ちになってくる。結局そんな時はそこにある中で最高得点を買うことになるいので、微妙なものも多い。いずれかのタイミングでハッと気付いて止める場合もあるけれど、​​見事に買ってしまった不可解なものたちも沢山あった。

それは時に安価なものに限らない。手持ちの大島などの中にも何故この柄にしたのだろうと思うものがある。「もう一枚大島欲しいな」が始まった時は100点を目指すのだけれど、探せばいいのにその時あるもので選んでしまう。ヒドい場合は出来上がる頃に「あれ?どんな柄だったっけな」と、覚えていない事もある。日頃見るからこそ熟慮出来なくなっているのかもしれない。どれも嫌いじゃないし余計にわからなくなる。

分割払いも原因の一つである。少しずつ払えばいいかと思うから我慢がならない。せめて買う前に一度熟慮できればいいのだけれど、分割払いに「買っちゃおう」と誘われる。おのれ分割払い、と思いはするけれど、高価な着物はほとんど一括しない。着物だけは分割にする。

決して私が購入した商品に問題があるわけではない。買い物でも価格やスペックだけで判断する場合は意外と冷静に判断できるのだけれど、デザインや好みになると私に対する判断基準が曖昧なので、ある程度妥協できてしまう。その結果冷静に買い物できないことが多く、数ばかり増えた事もある。

結局のところ、私自身の場合は失敗しても仕方ないと割り切れているのだろう。しかし人に勧める場合にはそうはいかないため、自分以上に真剣に選ぶか、「好きに選んでください」と責任放棄するかのどちらかになる。売っているくせに責任放棄もどうかと思うが、逆に考えすぎて「今回やめておけば」と引き留めて怒られたこともある。やっぱり購入心理は難しいし、自分のことはわからない。