41 靴下作ったけれど

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

着物の業界では企業単位のブランド、オリジナル品が増え、アイテム自体も多様化してきたように感じる昨今。自分に合うものを探すのも楽しみの一つだけれど、使ってみないとわからないのも事実。当社製品も例外でなく、やはり合う合わないはどうしてもあると思っている。

そういう私にもかつて自分に合う物探しの時期があり、様々なものを試してみて徐々に自分のスタイルが出来上がった。例えばカジュアル向けの着物でも絹、綿、麻、化学繊維といった素材の違いや、染物・織物といった言葉に代表されるような作り方の違いなどがある。それぞれに一長一短あるけれど、さらにデザインやカラーなどの選択肢を加えると何から手を出せば良いのかわからない。洋服ほど参考になる着姿や情報も少ないので判断が難しく、当時の私も結構散財してしまった。

ある時下駄で盛り上がっている人たちを目にし、浴衣の時しか履いた経験のなかった私は興味本位で下駄を買ってみた。けれど私にとっては立ち振る舞いに慣れないこととコーディネート的な部分、選んだものとの相性もあって、自分のスタイルに合わず結局数回履いただけだった。私と下駄は分かり合えなかったようだ。

またある時はグレーに惹かれてグレー中心にコーディネートしてみたのだけれど、知り合いに「グレーは似合わんね」と言われた。私も着ているときから「何かおかしいぞ」と思ってはいたが気兼ねない間柄に言われて心底納得した記憶がある。グレー全般に難しいというよりも、その時着ていたグレーとコーディネートが良くなかったのだと前向きに思っているのだけれど、とにかく経験してみないとわからないことがある。

逆もある。「着流しや袴の時に、足首(肌)が見えると嫌だ」「足袋を毎日たわしでゴシゴシ洗うのが面倒だ」「履き心地も不満だ」という私個人の意見(見た目+面倒くさがり)を製品化したのが当社のnono socks。当時私自身が愛用していたものを製造販売する企業にオリジナル品の製作をお願いして製品化した。私としては今尚大満足でフォーマル以外はそれしか履かないのだけれど、男性のお客様が来店された時にここぞとばかりに熱く語ってみると、語りすぎなのか、多くの方に「?」という顔をされる。着物を着る醍醐味に足袋が入っているのか、私の美的感覚が少し変わっているのか、他社商品で事足りている方が多いのか、黒を嫌うのかわからないけれど期待したことと少し違って拘りの人向けの商品となっている。自分が気に入りすぎて期待しすぎていた。

ワンデザイン、ワンカラ―の24~27cmのみ。

ちなみにその何年後かにスタッフから「足袋を作りたい」と聞いた時には大丈夫かなぁと思ったのだけれど(足元はロットが大きいぞ!)予想に反して大好評。わからないものだ。

ストレッチ足袋dual。バイカラーもある。価格も3サイズ。

とにかく誰かが良いというものも自分で試してみない限りはわからない。色々経験することで自分に対する良し悪しははっきりして落ち着いてくるのだけれど、一方で選択したことのない生地やデザインなどへのチャレンジ精神はいつになっても興味として表れてくるので、他社の製品に「おお!」っと思うことも良くある。

最近では自社のもの以外で着ることは殆どなくなり、私が着るのはサンプルや参考品など後の商品開発目的ばかりになっているけれど、興味深いものは尽きない。

nonoのサイト少しだけサンプルを配布しているのはこの「合う・合わない」という選択肢が少しでもクリアになればいいなと思うからである。気になるものがあればぜひ手に取っていただきたいと思う。一部のものだけで、socksにサンプルはないのだけれど。

サンプル生地一覧