42 綿の着物を知って

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

​着物を頻繁に着る以前より綿の着物は着ていたけれど、それまで普段着として着物を着ていなかったこともあって、綿着物=家で洗濯・普段着着物という発想に繋がらなかった私。知った時の驚き、「え?綿着物って家で洗えるの?」はなかなかのものだった。考えてみれば当たり前なのかもしれないけれど何故か私の脳内は「家庭洗濯可能な着物=ポリエステル素材」に完全支配されていた。

そもそも綿素材の着物は当社の環境下では見かけない商材。興味があったので知り合いの小売店にお願いして購入させてもらった。水通しで縮ませることもその時知った。大島の湯通しと呼ばれるそれは製織時の糊落としが目的で、綿の着物は水に通す目的自体が違っていた。

自社企画品以外で実際に購入して着てみたものは数点だったのだけれど、敬遠してきたわけではなく、むしろ業界に浸かっていた私の価値観を変えてくれた重要なものの一つであり、これからの着物に益々なくてはならないものではないかと思っている。

太物という言葉を知ったのもその頃だった。シルク製品を呉服というのに対して綿、麻、ウールなどを総称して太物という。ちなみに私自身知るまでは呉服=着物と思っていた。とにかく絹以外の着物に興味が出たのも、日常的に着物を着るようになったからだったし、そこはまるで別業界だった。

結局の所、それで絹を着なくなったかというとそうではなく、お互いの良し悪しを知って絹とそれ以外(呉服と太物)を7:3ぐらい(なんとなくそんな割合かな)で着ていた。そのうちに​「​着用テストをこなさねばならない自社サンプル品​」​に私の着るものは支配されていくのだけれど、それでも知らない価値観に出会うと面白い​。綿の着物はまさに今までの感覚をひっくり返された着物の一つだった。

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nonoの綿着物 Gritter