67 着物関連イベントに参加していた

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

「ユーザーなのか、業者なのかというと、やっぱり業者なのだと思う。」臨機応変が苦手な私はそんな風に考えていたので着物のイベントに参加する時にどういうスタンスでいればいいのかわからず、気持ち的に何となくモジモジしてしまうこともあったのだけれど、それでもイベントに数合わせも含めて参加要請を頂いたりして新鮮さを感じていた。呼ばれる立場も時にユーザーだったし、時にはメーカーの人だったけれど、イベントの主催者や内容、目的などによって居心地の良し悪しは様々だった。そもそも集団における統率力も気遣いも立ち回り能力も全く以って持ち合わせていない私であるので、そういう場は至極苦手である。ましてや「お酒ぐらい自分で注げばいいやん」というどこかから反対意見が飛んできそうな価値観を持っているので取り分けたり注いだりなどはしないし、なんなら特定の人以外と全く話さずに終わることもある。加えて隣の人と無言でも気にしないという恐ろしいスキルがあるので、それなら参加しなければいいやんか、と周りから見れば思われることもある程。まったくその通りだと自分でも思うのに参加したりして、自分でも謎である。

そんな中で当社の商品を着て頂いていると超絶嬉しいのだけれど、そういうことは除いて「着物」を共通項に話が弾むかというと、私の場合は気を利かせてそういう話題を作っていけないこともよくあった。逆に相手の仕事や人生観など私の知らない事に興味が湧いてしまい、空気を読まずにそんなことばかりを聞いて帰り、「もっと着物のお話をすればよかったかなぁ」と省みることも少なくなかった。その頃は最近とは違ってそれなりに着物を語ってみたりもしていたけれど、振り返ってみるとそれはそれでとても自分本位なものに思えて何とも苦みがあり、とにかく様々な人とうまく会話ができなかった。そんな自分勝手な私でも、着物イベントに参加されている皆さんが凄く楽しそうにしている様をぼんやり眺めることこそ最も心地よくて、傍から見ればジロジロ眺めて変なおじさんかもしれないけれど、それが最大の参加動機だった。

ただしそうやって参加していたのも始めのうちで、次第に内にこもるようになったのは、やっぱり大勢が苦手でうまく話もできず、その苦手意識をついに克服することがならなかったからだ。

2013年。別にしょんぼりしているわけではないが、この席から微動だにしなかった。