69 片身変わりの着物

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

片身替わりの大島紬を作ったのはいつ頃だったか覚えていないけれど2010年の写真には既に写っていたので随分昔だ。

片身替わりというと元々は体の左右で別の生地を使って仕立てたものを言うようだけれど、そこから派生してニ種類の生地で仕立てたもの全般を指すこともある(少なくとも私の周りでは)。左右別々のものも含め、通常一つの反物で仕立てる着物をニ種類以上の反物で仕立てると好き嫌いはあるだろうけれど当然ながらオリジナリティが発揮される。

衿と衽など、多少のややこしさはあるが、そんなに難しい理屈ではない。ただし反物は半分の長さで販売されていないので二つの反物が必要になる。誰かとシェアするか、羽織と着物など一人で二枚作るかという選択肢になる。

私の場合、先輩社員と半分ずつしたのだけれど、私は細かったし先輩は細くなかったので案外一緒に着ていても体型が違いすぎて同じ着物だと認識されない事が多い。先輩との生地の配置は全く同じだったのだけれど、ニ種類の生地をどう配置するかでも見た目は随分と変わってくる。ただ、細い私は生地が少なくて済むかというと、残念ながらそうではないのだけれど、いずれにせよどうやっても一反で二人分は取れないので二反必要になる。

ちなみに二つの生地はどんなに似ていても製造上は異なるものなので、たとえば経年による色の変化(特に天然染料の場合)に大きな違いが出る場合もあって、時に片身ならではの味わいが出る。

私の着物は着すぎてだいぶ傷んでいたのだけれど最近もう一度仕立て直した。相当な回数着ていたので傷みが激しく迷ったけれど、なんとか仕立ててもらえたのでもうしばらく着ようと思っている。