74 雨。和傘を愛でて満足した。

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

雨に打たれることを覚悟すれば案外悪くないというか、むしろ開放感を感じることもあるのだけれど、大方はそんな覚悟とは縁遠い濡れたくないシーン。髪はモシャモシャして気分もどこかジメジメする。

雨だからと着物を避ける方もいらっしゃる。しかし毎日着るぞと拘っていた間は当然着物一択。ムキになって毎日着物を着ていたけれど雨が嫌だった。最近になって洋服も着るようになると、雨の日に出来れば着物を選びたくないと感じていることがわかったが、着物一択だと他に着るものはないので自覚していなかった。ただ雫や泥跳ねが気になって気分が上がらない。それまで店舗など室内ばかりで着ていてしばらく慣れなかったことも関係していたのだと思う。

いや、雨が相当嫌いなわけではなく、眺めたり雨音だったりは結構好きなのだけれど、着物と雨という組み合わせが私と相性が悪いご様子。

ところで、雨が続くと新しい傘が欲しくなる私。学生の頃に母に傘を買ってもらって傘をさすことが楽しみになった事がきっかけだ。着物を着るようになり洋服以上に雨に後ろ向きな気分だったのでそれまで以上に新しい傘を探した。

そんなときにふと耳にした和傘。馴染みのないそれに興味が湧いた。着物だから傘も和のほうがいいのかしらと脳裏を過ぎったけれど、そもそも和自体に特別な興味のない私だったので、ネット上で和傘を検索しながらも買う決心は付かなかった。

結局その時は普通の傘を新調したのだけれど、それから何年か後、友人が和傘を使うのを見た。もともと格好良く着物を着こなすその姿に和傘はすんなりと一体化し、そしてこういうことかと思わせる素敵さがあった。純粋にいいなぁ、凄いなぁと愛でて、同時にこれは自分には使いこなせぬと感じて満足した。和に詳しい彼のキャラと対になりすぎて、それはそれは印象的だった。

素敵な傘の人が私には魅力的に見えるからかもしれない。和傘に限らず何度か印象的な傘姿(っていう?)の人に出会ったことがある。当の私は今のところお気に入りの傘も私の着物にぴったりだと感じる傘も見つけられないでいるなと雨の中そんなことを考えた。