寄稿者:橋本繁美
暦の上では秋のはじまり。とはいえ、実際には残暑厳しく、気温もピークに達する頃。夏の甲子園もはじまり、東京オリンピックの後も日本中が熱気に包まれる。とはいえ、「秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」(藤原敏行)の歌に心ひかれるのは日本人の歓びなのか。そうそう、芙蓉咲き、法師蟬が鳴きだす頃でもある。
箸の日
8月4日は橋の日ではなく「箸の日」とされている。日本人は語呂合わせが好きだ。
東京都千代田区にある日枝神社では、「箸供養祭」がおこなわれる。神前に長さ1メートルほどの大きな箸が供えられ、また使用済の箸が集められて供養するといわれる。
箸が折れたら縁起が悪いというが、逆に箸は折るものである。日本では箸を神霊の依代とみる信仰があったと聞く。そのため、自分の使った箸を他人が使うことを嫌がり、箸を使ったあとは折って捨てる習俗があった。1回ごとに使い捨てにするのが正式だった。現在なら、資源の無駄遣いと非難されそうだ。江戸時代になって塗箸が登場し、来客には割り箸を出すようになったとか。ま、たいせつな箸に感謝し、健康を祈ろう。