21 襦袢Tシャツ開発秘話1

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

前回の襦袢が楽しかった時代を含め半襦袢も長襦袢もそれなりに経験を積み、着物生活も数年経った2013年~2014年頃だったと思う。既に着物を着ることに慣れていたからか、着物をもっと簡単に着たいという欲求が湧いてきた。もともと「かなりのめんどくさがり」という性格からかもしれない。

その頃には着物の中にシャツやハイネックを着るという着こなしもSNSで見られるようになっていた。私はハイネックセーターを着たことがなく、数年の「出かける時は着物のみ生活」で手持ちの洋服が少なかったこともあって、なんとなくそういう着方はしなかった。

けれどもSNS上の着こなしを見ているうちに「着物の中に何を着てもいい」という感覚になれたことは大きかった。「自由で楽しい」という着物の流れを感じる中で、「襦袢もTシャツ型でいいんじゃないかしら?」と思いついた。

思いついて意気揚々とネットで検索してみると既に数種類は商品があって驚いたけれど肌着感あふれるそれらは私の思い描いたものとは違っていたため、商品開発が始まった。ただ商品開発とは名ばかりで、「商品をつくる」ではなく、「自分が欲しいものをつくる」という自己満足目的だけだった。誰も買わなければ全部自分で買おうと思っていた。(この「自分が欲しい」という考えは現在nonoの商品開発の根幹になっている)

具体的に欲しかったのは、胴部分が白ではないもの、そして衿がよれないことだった。試行錯誤の結果、衿も胴と同じ素材にして肌着感を軽減し、また衿を固定できるようボタンで留めることにした。

そんなこんなでパタンナーさんと共にああでもないこうでもないと繰り返し、形の原型に辿り着く。衿の角度も理想の形になるまで何度も調整を繰り返した。形ができるまで大変だったし、着物を毎日着ていなければ発想していなかったし、着物を着る人たちのSNSがなかっても辿り着かなかったと思う。

そんな経緯があって発売に漕ぎつけたのが2015年のことだった。(つづく)