22 襦袢Tシャツ開発秘話2

男と着物 - 回想録 -

投稿者:ウエダテツヤ

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(つづき。その1はこちら)発売してみると周りの人を中心に高評価を頂いたのだけれど、前回記載の通りそもそも大して売れると思っていなかったので限定数で製品化していた。「これいいで」と言われて嬉しかったが「よく知ってる人やし言うてくれるんやろうなぁ」と思っていた。

いつの間にか在庫がなくなった時には驚いた。そこでようやく追加生産する気になったのだけれど当初見つけた生地は既に手に入らなくなっていた。価格を抑えるために定番外の生地を使ったのが原因だった。

これではいけないと思い、改めて生地メーカーの定番品で製品化することにした。価格は上がったけれど、「着たいものを作る」ことから始めたので安価ですぐダメになるものではなく納得いくものを作りたかった。ようやく安定して販売できるところまで漕ぎ着けた。

そうして発売から数年。ある時には海外のブログに取り上げられ急に注文が増えた。また、そのブログを読んで、海外からのお客様がTシャツ目当てにご来店いただいたりした。ネットの可能性、グローバルを感じた瞬間だったが、そんな時は当時「駅前留学」していた母が対応した。

また、着物小売店さんにも徐々に浸透していった。「着物を自由にファッションとして楽しもう」という雰囲気はSNSの後押しもあり、ちいさな業界に流れる時代のような気もした。

一方でその間縫製先の廃業などで縫製価格はみるみる上昇していった。上代価格を据え置いたが徐々に難しくなり、ついに製造を一旦中止せざるを得なくなった。そこで価格、品質を踏まえて再制作し直すことにした。こうして生まれたのが次の商品、襦袢Tシャツ「Listo(リスト)」である。しかし製品化までは苦難の道だった。

私の着用頻度(毎日着物=Tシャツローテーションで週1~隔週1ぐらい)で衿の伸びやよれを出来るだけ防げるようにサンプル縫製と試着を重ねて生地を選定した。しかし、いざ製品化する段階で問題発生。求めるもの・生地・形状が簡単にマッチしないということが分かった瞬間だった。天を仰いだ。

「これは大丈夫じゃないか」と、縫製後のシルエットが美しくとも、洗濯すると納得できない。様々な事を試して洗濯して、を繰り返した。あんなにハラハラしながら洗濯したこともなかった(その後様々な商品で経験するのだけれど)。幸運なことに京都の企業同士で携わっていたので場合によっては日に何度も製品を往復させてもらい検証した。結果的にはとても手間のかかる(気の使う)工程を経ることで解決できることが分かったが、当時の縫製先では今までの条件では対応できないという結論になった。途方に暮れかけたその時、現行の縫製先に偶然巡り合い、再び前進できた。周りの人に恵まれていると実感したし、この経験はとても大切だったと思う。これ以来改めて(企業同士が互いに近くにある、という意味で)made in 京都の意味を感じ Kimono Factory nono の製品開発を行っている。

着物を着る人が増える。着物がもっと身近になる。それはとても嬉しいことではあるけれど、そのための方法は単純ではないし、私にはどうすればそうなるのか分からない。だから自分を一番のユーザーにして自分の欲しい物を形にする。

私たちがユーザーとして進化すると同時に商品もどんどん進化する。その面白さこそが Kimono Factory nono の商品開発であり、それに気付かされたのがこのTシャツだったように思う。

そのすべては私たちだけでなく、そこに関わる沢山の人によって支えられている。