寄稿37 八朔(はっさく)

京の旬感寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

八月は葉月。八朔は旧暦の「八月朔日(ついたち)」をいう。もとは農家が豊作を願う習わしとされ、秋に収穫される稲の実りを祈願するもので「たみの節句」といわれる。新穀(田の実)の豊作を祈る(頼む)収穫の前から祝いが主だったが、後に収穫物を贈ることに転じ、贈答儀礼の習慣が根付いたともいわれている。

京都で「八朔」といえば、毎年8月1日に芸舞妓が芸事の師匠やお茶屋に感謝の気持ちを伝える夏の伝統行事「八朔」が有名だ。先日の京都新聞によると、ことしは正装の黒紋付きではなく、夏着物を着用したり、少人数でまわるという新型コロナウイルス感染対策がとられていたり、なかにはあいさつ回りの中止を呼びかけた花街もあったそうだ。日頃お世話になっているお茶屋では、芸舞妓が「おめでとうさんどす」「相変わりませず、おたのもうします」と丁寧に頭を下げると、「暑いところ、よう来てくれはった」と女将は笑顔でねぎらいのことばをかけ出迎えるとあった。花街ならではの晴れやかな伝統行事。ことしは静かな八朔だったが、来年からは従来の八朔が見られることを願いたい。