寄稿13 底冷えの京の冬

京の旬感寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

ブルッときたのは、

寒さのせいだけかなぁ。

こういう時のほうが、
むしろ感じやすかったりするって
言うものね。

JR東海「そうだ 京都、 いこう。」1995東寺(教王護国寺)
コピーライター太田恵美さんのコピーより

寒い日が続きますね。暦のうえではもうすぐ春というのに、マスクと、マフラー、手袋が必須の毎日です。ことしの立春は、なんと2月3日。1985(昭和60)年以来、ずっと2月4日だったのに、日付が37年ぶりに変動するそうです。となれば、その前日の節分は2月2日となり、なんか変な感じが…。例年なら、京都の社寺では追儺式や豆まきなどの節分会がおこなわれます。吉田神社や蘆山寺の追儺式、千本釈迦堂のおかめ節分は特に有名です。

京都は、東山、北山、西山と山に囲まれた盆地のため、この時期は「底冷え」という言葉がよく使われます。北国育ちの人さえ、京の寒さは応えるというほど、ブルッと身が震えるといわれます。昔の人たちは偉い。忍耐力があったのですね。ああ、冬でも寒さを感じさせない奄美大島が羨ましい。

澄んだ空気が、気持ちのぜい肉を落としてくれそうなこの季節。
足袋もはかず、あかぎれ足をちぢこまらせていたので、冷寒は
足裏から骨をつたって頭のてっぺんまでつきぬけた。寒いとい
うよりは痛かった。寺の床が高かったせいかもしれぬ。寝てい
ると庫裏の縁の下は風音がして地虫も啼かず、ああ、またあし
たも雪かと眠りにつくまで霜焼け手をこすりあわせている。

水上勉著『日本紀行』「京の冬」より

底冷えの京の冬。思い切って、外へ出かけようとしても、またもや出た緊急事態宣言のため、おとなしくしているしかない。みなさん、風邪やコロナに気をつけて、くれぐれもご自愛ください。