寄稿130 落ち着いた町並み姉小路通/ 京を歩く

京を歩く寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

御池通と三条通の間に並行している姉小路通(あねやこうじどおり)。東は木屋町通から西は佐井通まで、途中、JR山陰本線で途切れるが約3.5km続く。本能寺入口の寺町通から歩いてみると、おなじみの筆墨文具の鳩居堂、柚味噌の八百三、京菓子の亀末広など老舗が残る静かな通りだ。

烏丸通まで来ると、今は姿をホテルに変えてしまったが、ここにはかつてNTT京都支店の建物を改修したショッピング施設「新風館」があった。若者をメインターゲットにしたテナントが多く入り、なかの広場にはステージがあり、音楽イベントや京の情報番組のテレビ中継がおこなわれていた。また、さまざまな若きクリエイターの作品発表の場所でもあった。友人の阿武野逢世もよく頼まれてステージに立っていたのを思い出す。姉小路通や三条通といった人の流れを大きく変えた集客コアとなっていたように思う。

現在、「あねやこうじどおり」と呼ばれているが、古い文献によると江戸時代までは「あねがこうじ」とか「あねのこうじ」と発音したそうだ。「あやのこうじ」(綾小路)とよく間違われるため、「あねこうじ」と呼ぶ人もいるらしい。平安時代、姉小路に沿っては、左京に東三条内裏・西京三条内裏・高松殿があり、中心部の朱雀大路近辺では、弘文院・勧学院・奨学院などの学寮があって、小路といえども、聞こえの高かった通りであったと記されている。中世に入っても、貴族や武士邸宅が、寺院と品格のある通りと知られていたそうだ。江戸時代に入ると、町民の移住による町の開発が進み、市街地を形成しはじめたとある。いずれにせよ、今も落ち着いた町並みは京都らしさを残す通りのひとつ。