寄稿133 京都人の教え?蛸薬師通/ 京を歩く

京を歩く寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美 編集:枡儀

私にとっての蛸薬師通といえば、独立して最初に事務所を構えた室町通を西に入ったあたり。と言っても、少し広めのワンルームマンションの一室。その頃はオフロードバイクで通っていた。四条烏丸という交通のアクセスを考え、得意先は神戸と大阪を中心に動いていた。当時はまた町家が結構残っていて、マンションの隣の町家には親切そうなお婆さんがいた。引越しの挨拶に行くと「軒先が空いているから雨の日はそこにバイクを止めてもいいよ」と言ってくれた。なんとやさしい人なんだと、間にうけてすぐに大丸に菓子を買いに行き、改めてよろしくお願いしますと挨拶に行った。

そして夏のある日、激しい夕立に見舞われた。気になるのは、大事なバイク。そこで、お隣りさんのお言葉を思い出し、軒下を借りることにした。雨が止み、ほっとしたと思っていたら、お隣さんが突然あらわれたのだ。「うちの家に大きなバイクが置いてあるが誰か知らないか」と、信じられない言葉。えっ、止めていいと言ってくれたやんと心で思いながら、バイクを移動した。腹のなかでは怒りの虫が。これって京のお茶漬けの世界?京都人の言葉を鵜呑みにしたのが間違いだったようだ。いい勉強になった、苦い思い出がある。

話を蛸薬師通に戻そう。蛸薬師通は新京極にある蛸薬師堂に由来する。河原町から新京極や御幸町通あたりは観光客で人通りも多い。昔は修学旅行生で賑わっていた記憶がある。烏丸通を過ぎると、北國銀行(現在はビルのなか)やマエダ珈琲本店、橋弁慶山町。そして西洞院通を横切ると本能寺址、空也堂、堀川高校。さらに西へ、JR山陰本線や日本写真印刷で中断するが、西大路通を越えて佐井西通まで続く。