寄稿16_1 梅の花。

京の旬感寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

東風吹かば匂ひおこせよ梅の花 主なしとて 春を忘るな(春な忘れそ)

おなじみのこの歌は、菅原道真が無実の罪を着せられて太宰府へ左遷される前に、だいじにしていた梅の木を前にして詠んだ作品。現代語訳「春風が吹いたら、匂いを(京から太宰府まで)送っておくれ、梅の花よ。主人(菅原道真)がいないからといって、春を忘れてはならないぞ」。「春を忘るな」と「春な忘れそ」と歌の最後が分かれているのは文献・出典によって異なるため。そういえば、北野天満宮の梅も満開のころ、25日は上七軒のきれいどころによる野点が花を添える梅花祭が開かれる。私の家の近くには、吉祥天満宮(朱雀天皇が菅原道真を尊崇して勅祀した初の天満宮。また遺唐使だった道真の祖父が船で唐へ向かう途中、海上で霊験を得たという吉祥天女を帰国後自ら刻み祀ったのがはじまりといわれている)。そして、仕事場の前には菅大臣神社(菅原道真公を祭神とする神社。この地はもと道真公の邸や、菅家廊下といわれた学問所の跡で、誕生の地と伝えられ、天満宮誕浴の井が保存されている。また「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花…」と詠まれた飛梅の地はこの神社といわれる)。学問の神様とのご縁、少しでも知恵を授かりたいものだ。