京は「ぼた餅」

寄稿者:橋本繁美

春のお彼岸が近づくと「ぼた餅」が店頭に並ぶ。一般的に、春は牡丹が咲く頃なので「ぼた餅」、秋は萩の花で「おはぎ」といわれる。個人的に、京都寺町にある菓子舗・仙太郎さんの「ぼた餅」が好きだ。以前にもらったこの店の冊子(著者:直中譲)に「ぼた餅」と「おはぎ」の違いが載っていたのでご紹介しよう。

もともと「ボタ」とは米の卑称。出荷できない、売り物になりにくい欠けたお米のことを「ボタ米」と称し、それでつくった餅を「ぼた餅」と呼んだ様である。もとは農耕の間食用としてつくられたものであったが、いつしかそれを春秋、昼夜を二分するお彼岸のときに、ご先祖様にお供えする風習となった。本来、「ボタ米」でつくった「ぼた餅」と呼んでいたものが、春にはその姿が牡丹の花のようだというので「牡丹餅」。秋には、小豆の粒が萩の花の咲き乱れているようだといって「萩の餅」「お萩」と呼んだ。現今では、春も秋も「お萩」というのが一般的であるが、私共では年中「ぼた餅」と呼んでいる。1個120グラムと大振りなのが、牡丹という名に相応しいと思って…。

幼少時代、祖母と母が大きな「ぼた餅」をつくっていた。熱々の小豆をいっぱいまとった「ぼた餅」。しかも、餅用の箱にきれいに並ぶほどつくり、お供え用、家族の分もたっぷり。朝、登校まえに大きな「ぼた餅」をペロリと食べていた。昔から、小豆を食べることで邪気を祓い、悪いことから身を守ってくれるといわれる。6月に食べる三角の菓子「水無月」も同じだ。小豆は天下一といえる丹波大納言。仙太郎さんの畑が、わが故郷の八木の神吉にあり、そこで仙太郎大納言(丹波大納言)が丹精込めてつくられている。しかも、謡曲「氷室」に登場する神吉の地だけに、氷室の純水と小豆の相性は抜群。もちろん仙太郎さんの和菓子づくりの心と技があっての話。いずれにせよ、京都では年中「ぼた餅」の呼び名で親しまれていると私も思う。

2021年03月18日 | Posted in 京の旬感, 寄稿記事-ことばの遊園地-橋本繁美 | | Comments Closed 

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