寄稿者:橋本繁美
田中一村の絵が京都にやって来た。奄美でしか逢えないと思っていただけに、とてもうれしい。京都駅とつながる伊勢丹7階にある美術館「えき」KYOTO。鹿児島県奄美大島で独自の画風を追求した日本画家・田中一村の画業を振り返る「田中一村展 奄美へとつづく道」。栃木県出身の一村は、幼少期から画才を認められ、南画から出発して、千葉ではスケッチに明け暮れながら日本画に移り、50歳ですべてを捨て、清貧に暮らし、奄美へ渡って独自の画風を築いた。そんな彼の7歳のときに描いた『菊図』や、米邨として描いた襖絵の大作や千葉の風景など、奄美に渡る前の作品が多く展示されているのも見どころひとつ。眺めているだけでうっとりする。画のなかに日本の郷愁が漂ってくるせいだろうか。また、亜熱帯のエネルギッシュな生態系をみごとに描いた『奄美の海に蘇鐵とアダン』『初夏の夏に赤翡翠(あかしょうびん)』などは、観るたびに感動を覚える。会場には、愛用のオリンパス製カメラ(2眼レフ)や撮影した写真、表札、筆なども展示されている。はやく奄美へ行きたい、そんな気持ちにさせてくれる展覧会でもある。6月6日まで。