寄稿59 元気快晴の祈願・道を楽しむ

京の旬感寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

元気快晴の祈願

年が明けた。初詣で各神社は昨年よりは多くの参拝者で賑わっていた。私は元旦の早朝に伏見稲荷大社に詣り、商売繁盛と家内安全を祈願した。京都ではありがたいことに正月三が日は晴天に恵まれた。とはいえ、一年で最も寒いこの時期を「寒(かん)」というだけに、冷たい風が吹くと頬をほてらせ、白い息を吐きながらの参拝となった。寒さが極まるやや手前のことを小寒という。

7日の朝は、七草粥をいただいて、この一年、新しい生命力を身につけ、無病息災を願う。正月のご馳走で疲れた胃にちょうどよい食事として、代々受け継がれている。春の七草は、芹(せり)、薺(なずな)、御形(ごぎょう)、繁縷(はこべら)、仏座(ほとけのざ)、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)。この七草を摘んでくることを「若菜摘み」という。

11日は、鏡開き。鏡餅を下げる日。刃物は縁起が悪いので、鏡餅は槌(つち)で割って食べるのが習わしとか。しかも、割るといわず「開く」。言霊を信じた日本人らしい言い換え。

15日(地方によっては14日)、とんど。お正月の飾りや書初めなどを燃やす行事。地方によって、左義長(さぎちょう)、どんとなどと呼ばれ、この火には霊力があると信じられ、お餅を焼いて食べると病気にならないとか、老人があたると若返るとかいわれる。この灰を持ち帰り、家の周りにまくと厄除け、虫除けになるという言い伝えがある。

道を楽しむ

茶道、花道、書道、香道、柔道、剣道、弓道など、日本には「道」で表わされる伝統文化が数々ある。これらに共通していえることは、技の前に精神修養あり。ひとつひとつ精神を集中、こころを無にして、「道」を楽しむこと、歩むことの大切さを語っていると思われる。どれも極めるには、かなりの時間、いや歳月が必要だ。そこから生まれる美、清、静、強、勝…日本には、なんと素晴らしい文化かあるのだろうと改めて感心させられる。

とはいえ、いきなり茶道とか華道といわれても、むずかしいと構えてしまう方も多いと思う。もっと気軽に考えてみよう。日本の懐石料理は茶道とともに発達した食の文化。食事の美しい所作を学ぶだけでなく、味や盛り付け、彩りや器にまで意識を向け、一期一会の食事を心で鑑賞する“ゆとり”を身につけるには、茶道の教えに則った食事の機会がとても役立つといわれる。さて、ことし、どのような「道」を楽しもうか。