寄稿68  智恵を授かりに十三まいり・春の彼岸

京の旬感寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

智恵を授かりに十三まいり

京都では、干支を一巡した数え年十三歳の春は「十三まいり」。「智恵まいり」「智恵貰い」ともいわれ、法輪寺【通称・嵐山の虚空蔵(こくうぞう)】さんに参拝し、健やかに成長したことを感謝し、十三歳の厄難を払い、智恵と福徳を授かるように祈願する習わしがある。
ご祈祷を受けた十三まいりの帰り「振り返ったら、あかんえ」とおかあはんの声。渡月橋を渡りきるまでは振り返ると「授かった智恵が逃げるとか福を失う」というゆかしい習わしがあり、また「もう子どもには戻れませんよ」という自覚を促す意味も込められているそうだ。

『難波より 十三まゐり 十三里 もらひにのほる 智恵もさまざま』の歌からも伺えるように、江戸時代中頃より近畿一円はいうに及ばず全国的な人気を集め、現在にいたる。

その渡月橋は、かつて法輪寺橋と呼ばれていました。大堰川に架かる渡月橋は、法輪寺の道昌僧正が川を修築した際に架けたのがはじまりとされ、江戸時代までは法輪寺橋と呼ばれていた。のちに、亀山上皇がこの橋を見て「くまなき月の渡るに似たり」として渡月橋と命名されたといわれている。

春の彼岸

春分をはさんだ七日間が春の「彼岸」。春分の日は彼岸の中日。煩悩に満ちたこの世を此岸(しがん)、悟りの境地のあの世を彼岸というように、極楽浄土は西にあると信じていた昔の人々は、太陽が真東から昇って真西に沈むこの日が、最も極楽浄土に近づける日と考え、仏事をおこなうようになった。昼の時間と、夜の時間の長さがほぼ同じになる(秋分と同じ)。