寄稿82 大島紬といえば泥染め

奄美探訪記と大島紬寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

奄美大島は、梅雨が明けたという。京都はまだ梅雨入りしたばかり。おそらく梅雨が明けるのは7月17日の祇園祭前祭(さきまつり)山鉾巡行が終わる頃だろう。といっても、連日、雨が降っているわけではない。どんよりとした空模様で、湿度も温度も高く、蒸し暑い日が続いている。

奄美大島といえば、大島紬を思い浮かべる人も多いだろう。かなり前に、枡儀の会長・上田真三さんと奄美に行ったことがある。目的は大島紬を知るためで、あちこちとさまざまな工程を見せてもらった。図案作成から完成まで知らないことばかり。訪れた現場はすべて緻密な作業の連続だった。

なかでも印象的だったのが「泥染め」という工程だ。車輪梅(しゃりんばい)の樹液の染料で20回染め、泥田で1回染めるという工程を3回から4回繰り返す。車輪梅のタンニン酸と泥の鉄分が結合し、糸が柔らかくなるだけでなく、あの独特の渋い黒の色調に染め上がるという、大変な労力が必要な作業である。もちろん、誰でもできるというものではなく、そこには長年の経験と染めに対するセンスが問われる重要な工程だ。それにしても、泥染を考えた先人たちって凄いなと感心する。次回は泥染のいわれについて話したいと思う。