寄稿91 大島紬の魅力を発信するために

奄美探訪記と大島紬枡儀のいろは寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美 編集:枡儀

奄美大島で生まれる大島紬。図案作成から完成するまでに沢山の工程があり、実に緻密な作業の連続だけに、現場を見てきた私には大島紬の価格には納得できる。だが、一部の富裕層だけをターゲットにしていたのではますます大島紬は遠のくばかり。そこで、何とかして身近なものにできないか、もっと一般の人に親しんでもらうためにはどうすればいいか、日々、いろんな人に会いに行き、ヒントになるものを探すために、具体的に動いたのが上田真三氏(現枡儀 会長)だ。

これまでに、大島紬を使ったものはあった。大島紬を使った財布やネクタイなど、土産物店に並んでいるものには心は惹かれない。どうせ作るのなら、もっと心ときめく本場大島紬を使った商品化を図りたい。上田会長は今まで誰も手掛けていない業界とのタイアップを考え、試作品を作っては試行錯誤を繰り返し、一つずつ商品化を図ってきた。さらに和装業界にこだわらず、もっと普段着として、おしゃれにと洋装にも展開しようと、テキスタイルデザイナーたちと新しいファッションの提案をおこなってきた。

もちろん、本来の大島紬の魅力を発信して、一人でも多くのきものファン、大島紬のファンをつくりたいという思いは変わらない。そのためには何ができるかと考えて、名瀬にアンテナショップを開き、一般小売のため、別会社を作って展開しはじめた。そのショップには、大島紬の切り売りともいえる「一枚の大島紬」が並んでいた。そして、草履、かばん、小物とアイテムが増えていった。
※現在はKimono Factory nonoと一体化し、ネット販売のみ