寄稿92 大島紬という本物の魅力

奄美探訪記と大島紬枡儀のいろは寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

ファッション化からカジュアル化へ。きものは「作る」「売る」「着る」といった密接な連携で成り立っているといわれる。逆から考えれば、きものを着るものがいなければ売れない。売れなければ作ることもできない。ではどうすべきか。ましてや高価な大島紬となれば、なおさら難しくなる。といって放っておくわけにはいかない。そこで考えられたのが、身近に買える本場大島紬を作る。だが、工程や手わざを考えるとそう簡単にはできるものではない。奄美大島が大好きで、大島紬に惚れこんだ上田真三氏(現会長)は試行錯誤を重ねた結果、名瀬にアンテナショップ“nono”を設け、同時に奄美織物株式会社という別会社を起ち上げた。

市場を増やすためには、大島紬の魅力をもっと発信して、買ってもらえそうな商品展開が必要と考えた。自社だけのモノづくりではなく、大島紬が映えそうな企業とタイアップして取り組んだ。仕事柄、小売業の厳しさはよく知っている。協力してくれそうな企業に足を運び、試作品を作っては問題点を改良して商品ができていった。そこには和装とか洋装といった区切りなどない。あるのは、キレイ、可愛い、ステキといった感性をくすぐるセンス、おしゃれ感だ。大島紬という本物の魅力を伝えるために、ブランド“nono”は今もなお成長し続けている。