寄稿者:橋本繁美

やすらい祭(今宮神社)
京都の三大奇祭のひとつで、鎮花祭とも呼ばれ、今宮神社の摂社、疫神社の祭礼である。平安時代、花が散る頃に疫病が流行り、これを疫神の祟りと信じ、花の精を鎮め、無病息災を祈願したのが祭りの起りと伝える。(あえて開催日を4月中旬とさせていただく)。「花よ、どうかやすらいたまえ――」疫病の流行を抑える呪術として、また空間に発散充満した悪気、花の霊魂を鎮めるための祭りで、桜・椿・若松・柳で飾られた風流傘に悪霊を宿らせ、踊り・囃子・歌の呪力でそれを退散させる。踊りは、赤鬼・黒鬼に扮した四人がそれぞれに鉦や太鼓を打ち鳴らし、花の蕾のごとく中央に小さくなったかと思うと、パッと跳んで開花する。この傘の下に入ると、疫病を逃れられるという。
今宮神社といえば、門前にある「あぶりもち」。「一和」は創業が長保2年(1000)、向かいの「かざりや」は創業以来およそ400年の歴史をもつ。いずれも稀有な老舗といえる。
おぼろ月
春のお月さんは、ぼんやりとしていて、輪郭がはっきりしていないことが多い。昼間の霞と同じ性質の空中に浮かぶ浮遊物、霧、靄(もや)、煙霧などによって、視界がさえぎられるためで、お月さんがかすんで見えたり、そのまわりに「かさ」、ぼんやりしたまるい輪が見えたりする。朧月といえば、小学校のときに習った文部唱歌『朧月夜』、思わず口ずさんでしまいそうだ。
1.
菜の花畠に 入日薄れ
見わたす山の端 霞ふかし
春風そよふく 空を見れば
夕月かかりて にほひ淡し2.
『朧月夜(おぼろづきよ)』 作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一
里わの火影も 森の色も
田中の小路をたどる人も
蛙のなくねも かねの音も
さながら霞める 朧月夜