寄稿25 夏も近づく八十八夜・端午の節句「大将さん」

京の旬感寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美

夏も近づく八十八夜

京の宇治は、茶どころとして名高く、京都・建仁寺の開祖である栄西がわが国の茶祖とされています。♪夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る あれに見えるは茶摘みじゃないか あかねだすきに菅の笠、おなじみの茶摘み歌。立春から数えて八十八日目を「八十八夜」という。5月2、3日あたり。その日に摘んだ新茶は極上とされ、昔から長寿の薬になるといわれています。新茶のやさしい香りと、ほのかな甘みは、喉の渇きだけでなく、心まで癒やしてくれます。
幕府に献上される宇治茶もこのころに摘まれ、茶壷に詰められて江戸に運ばれ、この一行のことをお茶壷道中(正式名称:宇治採茶使)と呼ばれていました。茶壷が通行する際には、大名も駕籠を降りなければならず、一行が通る街道沿いの村々には街道の掃除が命じられ、田畑の耕作が禁じられるほど、格式の高いものでした。童謡「ずいずいずっころばし」は、このお茶壷道中を風刺した歌だといわれています。

端午の節句「大将さん」

5月5日の端午の節句は、奈良時代に中国から伝わってきた行事で、当時は病気や災厄を避けるため、薬草摘みや菖蒲酒を飲むなどがおこなわれていたそうです。江戸時代になると「菖蒲」という言葉の響きが、「勝負・尚武」に通じることから、男の子の無病息災を祝う行事に変わっていったといわれています。京都では「大将さん」と呼ばれる武者人形や兜を飾ってお祝いします。お供の武者や馬を従えた凛々しい武者人形のまわりには、刀や弓、のぼり、提灯も飾られ、男の子が病気や事故などの災厄を逃れ、雄々しい武士に育ってほしいという昔の人々の願いが伝わってきます。
♪柱の傷はおととしの 五月五日の背くらべ 粽たべたべ兄さんが はかってくれた背の丈…。子どもの日にいただく縁起物の「粽」と「柏餅」。粽といえば京の老舗、川端道喜粽でしょうか。粽は難を避ける厄払いのチカラがあるといわれ、京都をはじめ西日本で多く食べられています。一方、柏餅を包んでいる柏の葉は、新しい芽が出てくるまで古い葉が落ちないことから、子孫繁栄につながる縁起の良い植物とされることから、柏餅は子孫繁栄の願いが込められているといわれます。さて、あなたのお好みは。