寄稿87 それぞれ糸の工程が命、大島紬

奄美探訪記と大島紬寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美 編集:枡儀

絣全解、またはバラ裂きの工程のあと、絣糸を1種類ずつ木枠に巻き取る。この作業を「揚枠(あげわく)」という。絣糸は水洗し、糊付け。そのあと、16本ほどの糸束となっているタテ絣糸を1本1本バラバラにしながら糊張り台に張り、その後タテ絣糸を図案に合わせて配列して分け、板に巻いていく。

ヨコ絣糸は揚枠のあと木製の管に一本ずつ巻き取る「管巻き」をおこなう。これで終わりかと思うと、まだまだ糸の工程は続く。大島紬には絣糸だけでなく無地糸が複合して織られるからだ。

絣糸ではない無地の糸は地糸(じいと)と呼ばれ織りあげる際に絣糸と一定の配列を成して織りあげる。この無地糸の工程が別途あり、タテの地糸(地経糸とも呼ばれる)は、染色、水洗、仕上げ糊付し、一旦小枠に巻き取ったのち必要な長さ、本数に整え千切(ちぎり)という枠に強く巻き取る。ヨコの地糸(地緯糸ともいう)は、千切ではなく、絣糸と同様に「管巻き」をおこなう。

このように複雑なそれぞれの準備工程を経て、ようやく糸が織工に渡され、「織り(製織)」の工程へ移っていく。このあたりは実際目にしても糸がバラバラの工程を通るため難解であるため現地で見学する機会も少ないが、一旦別れた糸通しが最後の製織で再会し一つの生地となっていくのである。次回は織り。 *参考文献『かごしまの大島紬今昔』出水藍子著