寄稿88 精緻な絣。技の出会う瞬間。

奄美探訪記と大島紬寄稿記事-ことばの遊園地-

寄稿者:橋本繁美 編集:枡儀

前回記事はこちら

織工はまず「立て付け」という、機(はた)にタテ糸をセットする作業をおこなう。この作業は立て付け専門の職人が行うこともある。

千切に巻いたタテ地糸と、板巻きしたタテ絣糸を図案に合わせて配列する。これら合わせて千数百本のタテ糸を綜絖(そうこう)と呼ばれる部分に一本ずつ通していく。この作業を「綜絖通し(綜通し)」という。

ちなみに綜絖は、タテ糸を上げ下げする用具。大島紬は平織なので経糸が交互に上下に分かれ、その間に緯糸が通る。足で踏木(踏板)を踏み替えることで上下運動する。

綜絖に通った糸を次は筬に通す「筬通し(おさとおし)」。綜絖を通過した糸を二本ずつ、櫛のような細かい筬羽の間に通していく。筬通ししたタテ糸を、棒に結んで固定し、いよいよ織りが始まる。

絣文様を合わせて、およそ13メートルの反物を織りあげていく。精魂込めてと表現できるほど数センチ織っては絣を調整し、張力を感じながらまた一定のリズムで織り上げるその姿は実際目にして感動を覚える。出来上がっていくそれを見ることでようやく薄っすら今までの工程がつながるのだけれど、ここまでにあった数々の技がまさに出会う瞬間のようで、すがすがしく厳かな気持ちがこみ上げるのである。 *参考文献『かごしまの大島紬今昔』出水藍子著